東京エレクトロニツクシステムズ株式会社増加する海外需要に応える
「グローバル人財」を育成

  • グローバル人材の育成・確保

東京エレクトロニツクシステムズ株式会社は、宇宙、航空、交通、情報などのインフラ分野で、設計から製造、工事、据え付け、保守、サービスまで、高い技術力を提供しているエンジニアリング企業だ。同社はJICAの民間連携ボランティア制度を活用し、2016年から技術者をシニア海外ボランティアとしてソロモンに派遣している。管理部・総務担当課長の望月康弘(もちづき・やすひろ)さんに、制度の活用を決めた経緯や期待、今後の展望などについて話を聞いた。

派遣先と当社が「Win-Win」の関係に

東京エレクトロニツクシステムズは、東芝グループの中で気象レーダー設備のメンテナンスを行う事業体として始まりました。現在は、エンジニアリング企業として、宇宙、航空、交通、気象、情報、通信、放送、電力など、公共性の高い幅広い分野において、さまざまなインフラの整備に取り組んでいます。さらに、電波や無線、システム開発、製品開発など、個々の分野で培った技術を生かし、お客さまのニーズに応じたシステムの開発やソリューションの提供にも取り組んでいます。

こうした取り組みの一つに、医療情報システムの開発があります。大規模災害が発生したときに、ICTを活用して迅速に医療が提供できるよう支援することを目的として開発したもので、スマートフォンとICタグを用いて情報を管理する「災害対応傷病者情報管理システム」を医療機関と共同で開発したのが始まりです。このシステムのノウハウをベースに開発した電子カルテシステムは、JICAの国際緊急援助隊(JDR)でも採用されています。また、フィリピンの緊急医療支援システム(SPEED)をもとに、当社が電子化システムとして開発中の「iSPEED」は、JICAの開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業に採択され、現在、フィリピンへの事業展開を進めているところです。

他方、当社のレーダー事業は、航空分野から気象分野にまで及び、航空管制用レーダーや航法支援装置をはじめ、気象観測用レーダー、雨量観測用レーダー、雷探知レーダーのハード設計から、ソフト設計、製造、工事、メンテナンスまで、幅広い領域の技術を提供しています。東芝グループが受注したODA事業で、開発途上国にこれらの機材を設置した実績も多くあります。そうした中で、JICAの民間連携ボランティア制度の活用を検討することになったのは、数年前から海外で気象レーダーや航法支援装置の設置業務が増えてきたことが背景にあります。国内での気象レーダーの需要は更新がほとんどであるのに対し、海外では新規の需要が大幅に増加すると予想されていることから、それに対応する「グローバル人財」の育成が急務だと感じていました。

当社が民間連携ボランティア制度を活用することを決めた理由は、大きく3つあります。一つ目はコミュニケーション力を含め語学力が身に付くこと、二つ目は日本とは異なる文化の中で人間性や人間力が育まれること、そして三つ目はインフラ事業を通じた社会貢献ができることです。

われわれの仕事は、時として装置を設置するために危険だといわれている地域に行くこともあります。その根底には「自分が行かなくてはいけない」という、装置を開発した技術者たちのプライドや責任感があります。社員を派遣するのであれば、技術が生かせるところに社員を送り出したいという気持ちがありました。われわれの技術で派遣先の国に貢献でき、そのフィードバックとして語学力やコミュニケーション力を身に付けることができれば、「Win-Win」の関係が築けます。派遣先にとっても、われわれにとっても、利益のある良い制度だと感じています。

管理部総務担当課長 望月康弘さん

甚大化する自然災害の予防に貢献していきたい

ボランティアの派遣国については、英語圏であること、そして当社の技術が生かせるところを条件に、JICAと共に候補の国を探っていきました。そうした中で最終的に選んだのが、ソロモンです。活動の内容は、ソロモン気象庁が導入したヴァイサラ製気象観測装置の維持、管理、運用です。当社が得意とするレーダーではありませんが、製品についての知識や取り扱った経験もあったため、相手国側の期待にも十分応えることができると考えました。

派遣する社員は社内公募で選びました。40代のベテラン社員と20代の若手社員の2人から応募がありましたが、電波応用技術を中心に国内インフラシステム関係に従事してきたほか、機器の維持、管理、メンテナンスなどに携わってきたこと、また気象観測にも携わった経験もあることから、40代のベテラン社員をシニア海外ボランティアとして派遣することにしました。こうして選ばれたのが奥山裕亮(おくやま・ゆうすけ)さんです。

語学に関しては、奥山さんはこれまで英語を使用して仕事をした経験がほとんどなく、派遣をきっかけに20年以上ぶりに勉強を始めたという状況でした。私たちは、赴任直後は苦労するのではないかと心配していましたが、そんな心配は無用だったようです。彼からは「こちらにはソロモン時間があります」「今日は船に乗って隣の島に行きます」と、日々、簡単な報告がメールで届くのですが、すっかり現地になじみ、現地なまりの英語「ピジンイングリッシュ」で所属先のスタッフと会話するなど、とても仲良くやっている様子が伝わってきます。語学が拙くとも、コミュニケーションのスキルがあればなんとかなるということを、経験として学んでくれたのではないかと思います。

奥山さんの任期は2018年9月までです。帰国後は、おそらく海外の現場に派遣することがあると思います。海外経験や語学力がない社員をいきなり開発途上国へ派遣するのは厳しいですが、民間連携ボランティア制度を通じて途上国での生活を経験し、コミュニケーションのスキルも以前よりアップしていると思うので、彼にとってもやりがいのある仕事になるのではないかと思います。

地球温暖化などの影響もあってか、近年は地球的規模で台風が大型化し、被害も甚大になっています。雲までの距離、雨滴の量を正確に測定できる気象レーダーは、災害被害を未然に防ぐためにも、今後需要が高まっていくと思います。ソロモンをはじめとした大洋州はもちろん、中央アジア、南米など、今後、積極的に事業を展開していく計画です。その中で、ボランティアとして人間力を育んだ社員たちが活躍してくれることを期待し、今後ともJICAの民間連携ボランティア制度を活用していければと考えています。

※このインタビューは2017年12月に行われたものです。

ソロモン諸島気象庁で活動する奥山さん(写真中央)と同僚の職員。後ろに見えるのは、日本が支援した気象衛星「ひまわり」の電波を受信するアンテナだ

PROFILE

東京エレクトロニツクシステムズ株式会社
設立:1992年
所在地:神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地
事業内容:無線、電波、情報通信、宇宙・人工衛星等の機器の設計、製造、据付、保守、修理
協力隊経験者:1人(2017年12月現在)
HP:http://www.toshiba.co.jp/tecs/index_j.html
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