認定NPO法人Teach For Japan協力隊経験者と一緒に
日本の教育を変えていきたい

  • グローバル人材の育成・確保

日本人の約6人に1人が貧困層。2014年7月に厚生労働省から公表された国民生活基礎調査で貧困率が過去最悪を更新したことを受け、親から子への貧困の連鎖を防ぐために教育の重要性があらためて強く認識されるようになった現在―。過去の経験に頼るだけでは解決できないさまざまな課題に直面している教育現場に、問題意識と情熱を持った人材を「教師」として2年間派遣しているのがNPO法人Teach For Japan(TFJ)だ。「教室から社会を変える」この新しい取り組みに青年海外協力隊経験者も多く参加している。今から4年前にTFJを立ち上げ、今年3月に第一期生を送り出した松田悠介さんに、活動の内容、協力隊経験者への期待や人材としての魅力などについて話を聞きました。

人生に影響を与えた教師との出会い

教師は子どもたちの人生に大きな影響を与えうる存在であり、教室こそがより多くの子どもたちに出会える場所だと思っています。そして、さまざまな課題を教師一人ひとりの手で、ほかでもない「教室」から解決していこうというのが私たちの活動です。

  誰でも忘れられない先生との出会いがあるのではないでしょうか。私自身、中学時代の体育教師の存在はとても大きなものでした。当時、私はいじめられていたのですが、その先生はそばに寄り添い支えてくれ、苦難を乗り越えるためのヒントとなる言葉をかけてくれました。そのおかげで私は自分自身で解決方法を考え、実行することができたのです。

  自分もそんな教師になりたいと中学の体育教師になったのですが、現場に入ると、子どもたちのことを第一に考え頑張っている先生が多くいました。ただ、中には教師になったときの情熱が薄れている先生もいたことは確かです。このとき、どうすれば一人でも多くの教師が情熱を持ち続け、子どもたちと向き合えるようになるのかを考え始めました。

  子どもたちに向き合い続ける先生を増やしたいという思いで、教育におけるリーダーシップを学べる米国の大学院に留学しました。そこで出会ったのがTeach For America(TFA)でした。TFAは1990年に設立された教育NPOで、教員免許の有無にかかわらず、2年間、米国一流大学の学部卒業生を国内各地の教育困難地域にある学校に常勤講師として派遣しています。TFAのこうしたプログラムは2010年度の全米文系学生就職先人気ランキングで一位を獲得するなど、社会的に大きな注目を集めています。優秀で情熱のある人材が子どもたちと向き合い、厳しい状況にいる子どもたちの学力や学習意欲を向上させることを通して、リーダーシップを身に付けていく。同じようなWin-Winの仕組みを日本でも作りたいと思った私は、2010年にTeach For Japan(TFJ)を立ち上げました。

代表理事
松田 悠介さん

協力隊と似ているTFJの活動

私たちの活動は、実は青年海外協力隊と似ているのです。国内版協力隊と言ってもいいかもしれません。派遣を望む自治体の教育委員会と、どういう学校にどういう人材が必要か、抱えている教育課題は何かなどを話し合い、応募者の中から選考し、赴任前に250時間、3週間にわたる合宿形式の事前研修を行います。2年間の派遣中も定期的な集合研修会や授業観察を行い、助言や指導といった形でフィードバックするなど、教師としての業務を継続的に支援していきます。

  選考は、TFJの考える教師に必要な行動特性に基づいて行っています。まずはTFJのミッション「教室から社会を変える」やビジョン「すべての子どもが成長できる『教室』」を共有していること。これが基本ですが、さらに柔軟性や臨機応変さがあり内省ができること、逆境を乗り越えられるストレス耐性があることなども重要です。これらは、協力隊の人材とオーバーラップするところがあるのではないでしょうか。途上国という過酷な環境へリスクを顧みずに飛び込み、現地の状況に臨機応変に対応し、異文化の同僚たちと信頼関係を築いてきた経験。多様な価値観を受けとめられる受容力は協力隊経験者の魅力です。

  私たちのプログラムで派遣されるのは、通常の教師が行きたがらない困難校です。7人に1人が母子家庭だったり、クラスの半分が生活保護や就学援助を受けていたりと、厳しい環境に置かれた子どもたちが多い学校です。そんな子どもたちの学力を高め、学習意欲や自己肯定感を持たせ、時代を切り開いていく力を身に付けられるような教育を受けさせたい、それができる社会の実現を目指しています。

  プログラムを修了した後の進路は参加者各自が選択します。今年の3月に第一期生がプログラムを修了し、それぞれの道を歩み始めています。約7割の修了生は教員採用試験に合格し、教育現場で活躍しているのですが、そのほか3割はさまざまな分野に進んでいます。修了生が教育現場にとどまらず、広く社会で活躍することで日本をより良くしようという動きを社会全体に広げていく、それもまたTFJの狙いです。

途上国での経験は日本の課題解決に生かせる

私たちはTFJのプログラムで派遣する教師をフェローと呼んでいます。フェローの経歴は協力隊経験者以外にも、大企業でグローバルなビジネス経験を積んだ者、個人事業主として一流アスリートなどのコーチをしていた者などさまざまです。

  そのうちの一人、2015年4月に福岡県の中学校に派遣された協力隊経験者は、まだ1学期しかたっていないにもかかわらず、地元教育委員会や学校側から高い評価を受けています。彼は中学1年生に英語を教えているのですが、とにかく本人が楽しく、わくわくしながら授業をしている。教師が楽しんでいると子どもたちも英語を楽しいものと感じられます。英語で時事問題を取り上げたり、隊員が活動していた現地の学校の子どもたちと英語で交流したり、2学期には英語のスピーチコンテストも計画しているそうです。いろいろなことに手を挙げて自分から動いていく、そんな主体性が評価されているのです。

  彼に限らず、協力隊経験者に共通しているのは、教育に対する問題意識を持っている、海外の経験を通して日本の教育課題に気付いている、自分の経験を日本に還元したいと思っている、修羅場を乗り越えた経験を持っている、現地での活動を通して課題解決能力やリーダーシップを身に付けている、ということです。

  TFAから始まった教育改革の取り組みは、世界30カ国以上に展開するTeach For Allというグローバルネットワークになっています。世界規模で連携し、情報やノウハウを共有し合っているのでスタッフには語学力が求められます。加えて、NPOの活動はベンチャー企業と同じで、あらゆることに迅速かつ柔軟に対応できることも必要です。協力隊経験者は語学に強いことはもちろんですが、その活動はベンチャー事業の立ち上げに近いと思っています。途上国で現地の人から学び、決まった答えのない課題に取り組み、ゼロから何かを作り上げていった経験を日本でも生かしてほしい。ぜひ、協力隊経験者にはフェローとして、そしてTFJの運営スタッフとして私たちの活動に参加してもらい、一緒に教育課題の解決に取り組んでいければと考えています。

PROFILE

認定NPO法人Teach For Japan
設立:2011年4月(法人設立)
所在地:東京都港区新橋6-18-3 中村ビル4階
事業内容:国内の教育現場に意欲ある若者を教師として派遣
HP:http://teachforjapan.org/
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